Stone Test 開発に向けた基礎的研究
(雪舟庭園 萬福寺 石庭)
石というものに惹きつけられます。
と言っても、宝石やパワースートンといった類ではなく、個人的にはどこにでもあるような石になぜか魅力を感じます。
臨床心理学的な関心から「石」について研究していると言うと、自分でも何を言っているのかよくわからないのですが(笑)、そうなのです。何かで知られると、大抵、きょとんとされるか、「そんなの心理学じゃない」と怒られたりします…。
ただ、臨床心理学という学問領域は、結局のところ人が関係しているものすべてが対象ですから、およそ何でも研究のテーマになるのだろうと考えて、怒られても迷惑にならない程度に研究してきました(苦笑)。
写真は、島根県の雪舟庭園です。今年の夏に行ってきました。とてもよい庭でした。
この庭のように、石を中心とした作庭はわが国に特徴的で、日本人の石に対する特殊な美的感性をうかがわせます。
また、柳田国男の『石神問答』で有名なように、わが国には石を祀っている神社がきわめて多いことが知られています。地名にも石神井や立石、明石や石見など石の付く場所は枚挙にいとまがないほどで、由来も面白い言い伝えのあるものが多くあります。
すなわち、われわれ日本人は、美的に、または宗教的に、常に石を身近に置き、愛好し続けてきたのです。
そのような関心から、自分のペースでぼちぼちと石について調べてきました。
これまで、町中に置かれた石を写真に撮って集めてみたり、石庭の石と箱庭に置かれた石の関係を考察したり、石の出てくる物語を収集して考察してみたりしてきました。
その中で、石のイメージが思った以上に複雑で、かつ大切なものを含んでいることがわかってきました。
石には「どこにでも転がっているもの」、「誰にも相手にされないもの」、「固くて冷たいもの」、「融通が利かないもの」というネガティブなイメージがありますが、一方で、「貴重なもの」、「安定しているもの」、「エネルギーをためているもの」といったポジティブなイメージもひそんでいます。
Jung, C. G. は、石のイメージついて、植物のそれと比較しながら、次のように述べています。
「石の中には宇宙の限りなさ、有意味なものと無意味なものとの混乱、および非人格的な目的と機械的な規則との混乱などが隠されていた。石は存在の底知れぬ神秘さ、つまり霊の具現を含んでおり、同時にそれそのものであった。」
(「ユング自伝—思い出・夢・思想」 みすず書房 より)
たしかにJung, C. G.の言うよう、石には一言では言いづらい、複雑精妙なイメージが備わっているように感じられます。
そのような石のイメージを考えているうちに、一つ思い浮かんだことがあります。
樹木画テスト(Baum Test)があるんだから、石画テスト(Stone Test)があってもいいのじゃないか、と。
ここ何年かかけて、Stone Test が心理検査として成り立ちうるか(かなりマイペースに(笑))研究してきました。
今回、その基礎的な研究の部分を整理し、紀要論文としてまとめました。
ただ、正直に言うと、思っていたほど明確な結果は出ませんでした。
残念ですが、それも仕方のないことだと思います。それも含めて研究です。
少なくとも本研究では、石を描いてもらうのにはかなり工夫した教示が必要なこと、描かれた石のどの特徴を分析の対象にするのかに検討の余地があることなど、課題が多くあることは明らかになってきました。
上手くいかなった研究も、後の人から見れば役に立つ知見があるかもしれず、そのようなことも含め、できるだけ公刊していきたいと考えています。
もしご興味がある方がいらっしゃったら、下記リンクからお読みいただければと思います。
ちなみに本研究は、科研費の挑戦的萌芽研究の助成を受けました。たいへんありがたいことでした。
そのような助成がないと、このような思い切った(?)研究はなかなかできないためです。
今回については、Stone Test が心理検査となりうる可能性の一端を示すことができた程度で、明確な成果とまでは言えないものですが、挑戦的萌芽ということで大目にみていただければと思います…(苦笑)。
「石」については続けて研究していくつもりですので、まとまった結果が出たらまた報告します。
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