大学のベンチ


 今年、初めて母校の非常勤講師をお引き受けすることになりました。

 ピンチヒッターなので今年度限りではありますが、本当に光栄なことだと思います。


 自分の母校に通うことができ、(いくつか建物は変わったものの)自分が学生だった頃と同じ空気を感じて、毎週うれしいような、胸が苦しくなるような気持ちで過ごしています。


 今授業で受け持っている学生さんたちは、皆適切な問題意識や批判意識を持ち、それでいながら他者の意見も柔軟に取り入れることができる良い学生さんたちで、感心しています。

 ゼミナール形式のため少人数ですが、メンバーに恵まれ、よい形で授業が進められているように思います。




 私は、これまで特別に愛校心が強いと自分を意識したことはありませんでしたが、卒業してずいぶん長い放浪を経た後(苦笑)、こうして大学に戻ってみると、自分のいた大学がいかに恵まれて魅力的な場所であったかと、強く実感しています。


 キャンパスは、都心にありながらわりと広く、緑も多く、とても居心地のよい空間です。

 専門に関して言えば、先生方も一流の研究者が揃っていました。

 学生さんは、(ーあくまで印象ですがー)当時も今もあまり変わらず、鋭い意見はもっていながらも、外見的には穏やかで、のんびりした人が多いように見えます。

 えーっと、贔屓の引き倒しになっていなければいいのですが・・・(笑)。


 しかし、私は、大学院まで含めると計9年間も通ったのに、当時、そんなふうに自分の大学をとらえたことはありませんでした。ただ、ぼんやり過ごしていました。まったく。




 当時も今も、自分の中で強い印象を残しているのは、講義棟の前の広場の高い木々とベンチです。


 いくつかある私の偏見の中の一つに「ベンチの多い大学はよい大学」というのがありまして、母校はこれに合致しています。いろいろなところに十分な数のベンチがあります。


 当時自分はなんであんなにひまだったのだろうと不思議に思うのですが、何かあれば、そのベンチに座ってぼんやりしていました。いや、正確に言うと、ぼんやりとではなく、17時になるまでただ時間をつぶしていただけだったような気がします。


    17時になったら近くの居酒屋が開くのでー(笑)。

   そんなことを思い出しながら、母校に通っています。


Ueda Lab (心理療法研究室)

とある大学で心理療法の研究と教育をしています。

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