理想の講義

 今年度の大学の講義も終わりました。

 講義が終わると、あとは試験やレポートなどの評価となります。

   実は、最近の大学では、教員も学生から(学生アンケートという名の)評価を受けまして、おおむね落ち込んだり、わずかに励まされたりしています(笑)。


 もちろん、自分はまだまだ満足のいく良い講義のレベルには至っていないことを自覚しています。

 そこで、「理想の講義」って何だろう、と考えてみます(ここで言う講義とは、演習・実習科目でない、教室で行われるタイプの一般的な講義科目を指します)。一応、自分の中にそういうイメージがないと「良い講義」という目標へ到達することもままならないはずですから。


 自分にとって「理想の講義」とは、


 ただ前に座って、板書は必要最低限で、ボソボソしゃべっている。なんだかよくわからないけど、しかし面白そうな雰囲気は伝わってきて、学生が食い入るように聞いている。

 

 そんな講義です。


 考えたら、ひと昔前の大学はそういう講義ばかりだったように思います。

 私はかなり不真面目な学生でしたが、そういったタイプの大学の先生の講義を聞いて、とにもかくにも、「自分の知らない、むしろ、自分にはわからない世界があるんだ」「それはなんだか奥深そうだ」と感じ、うれしいような気持ちがしたのを覚えています。


 大学の先生の講義は、そういった未知で恐ろしいブラックホールの入り口をちらっと見せるような、そして、それに釣られふらふらと寄ってきた学生をブラックホールに吸い込むような働きがあったように思い出します。(上手い喩えではないのですが)




 しかし、現代の一般的な「理想の講義」とされるものは、少し様相が違ってきているようです。


 すぐにイメージされる「理想の講義」は、いわゆるTED式のプレゼンテーションスタイルの講義でしょうか。

 あるいは、学習効果が高いとされる「アクティブ・ラーニング」という形式のものですね。

 現代は、このアクティブ・ラーニングばやりが顕著で、大学の講義でも、少人数で「問題解決」「グループワーク」「ディスカッション」「体験学習」を取り入れるというスタイルが増えてきています。


 他の先生の講義を拝見することもありますが、どの先生もなかなかattractiveで、学生の目をしっかり見て語りかけるように話したり、机間を歩きながら個別に声かけしたり、さらには頻繁にグループワークをさせたりされています。

 学生を飽きさせない工夫を随所に感じ、本当に感心させられます。


 それらが講義の仕方の大事な一種であることは間違いないと思います。


 自分はあそこまでattractiveには、ちょっとできないです・・・。端的に言って、恥ずかしいです(笑)。

 加えて、自分が学生だったら、「今ちょっと考えてるから、そっとしておいてくれよ」と思うような気がするからです。


 アクティブ・ラーニングは「アクティブ」と言うほどですから、学生が受動的ではなく能動的に学べるようにということでしょう。

 それは非常に意味のある方向性ですが、少人数のグループワークがアクティブで、大教室で教員の話を聞くことがパッシブかというと、これは必ずしもそうとは言えないように思います。

 話を聞いているだけなのだけど、一人で頭の中が非常に「アクティブ」になっているということはしばしば経験します。


 大教室で話を聞くだけの講義は学生を受け身にさせるから、少人数でグループワークでも。

 これはさすがに雑駁すぎる議論でありましょう。





 かく言う私も、自分の講義では、スライドの見た目に凝ってみたり(苦笑)、体験学習やグループワークを取り入れたりしています。それは、今の自分の力では、思い描く「理想の講義」ができないために、つまりは、語る内容だけで学生を十分に引きつけることができないために、それを便宜的に補っているような感覚なのです。

 つまりは、自身の力不足なのです・・・。


 やれやれ、難しいものです。


 皆さんの「理想の講義」はどのようなものでしょうか。

Ueda Lab (心理療法研究室)

とある大学で心理療法の研究と教育をしています。

0コメント

  • 1000 / 1000