代議員に立候補しました


 昨年中は、さまざまな方面の皆さまに、個人的にも、また自身の相談室的にも、大変お世話になりました。ここにお礼申し上げます。

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。


 このたびご縁があり、日本心理臨床学会の第5回代議員に立候補させていただくことになりました。

 私がどのような人間であるかは、論文や拙著、あるいはこのホームページをご覧いただくとある程度わかるかと思います。

 もしよろしければ、どうかご支援のほどよろしくお願いいたします。


 合わせて、短いものではありますが、もし代議員に選出されたらどのように学会にかかわっていきたいかについて、こちらに少し書かせていただきます。




 最近、女優の杉咲花さんがインタビューで次のようなことをお話しされているのを目にしました。


生活が何より大事だと思う。

人生をかけて仕事をするのではなく、生活をしっかりやってそれを仕事に落とし込みたい。

(NHK スイッチ インタビュー)


 立派な言葉だなと思います。芸能という特殊な仕事に就かれていながら、このような見方ができることを尊敬します。同時に、芸という意味を広く取ることによって、われわれの仕事にも当てはまる言葉であるように思います。

 上手く言えませんが、代議員としてこのようなことを大事にする学会としたい、というのがまず率直な気持ちです。




 学会は学術団体ですから、理論的なことを研究し、議論し、ある種の成果を追求する場であることは間違いがありません。

 同時に、われわれの場合、学会は研究だけでなく日々の臨床という仕事と結びついた学びの場でもあります。

 ですので、学会は議論のための議論をしたり、異なる立場を批判したり、臨床心理学という学問を評論する場ではなく、それぞれが(杉咲さんの言うように)「自身の生活を大事にしながらそれを仕事に落とし込む」手助けとなるような場であって欲しいと思います。

 心理臨床は、ともすると抽象的で、壮大で、美しく、強い言葉で、語られることがあるので、なおさら上のようなことに気をつけておく必要があるように思います。

 

 そのためには、厳しい議論が大事であると同時に、過激な意見や分断をあおるような意見に対して「したたか」であることも大事でしょう。


 「生活をしっかりやってそれを仕事に落とし込む」ということについて、学会がサポートできることとしては、研修の充実(質だけではなく利用しやすさも含め)や、心理援助職の地位向上に向けた働きかけや、現在もなされている各種支援活動への積極的なコミット(ボランティアではなくしっかりと有償のものにして)などがあげられるでしょう。

 別な角度から見ると、「生活をしっかりやってそれを仕事に落とし込む」というのは、次のような側面もあると思います。心理臨床の場合は、日々の生活の細々とした、そして丁寧な行いは、実は専門知に結びつく豊かなアイデアの宝庫でもあります。子どもといっしょうけんめい遊んだり、時間があるときはいつもと違う帰り道を通ったり、美味しい食べ物を時間をかけて作ったり、専門書だけでなく好きなマンガをたくさん読んだり...。それは直接、間接に、臨床に生きているように思われます。したがって、これからの学会は(特定の理論的オリエンテーションにかかる研究だけでなく)、そういった日々の生活から着想される研究を積極的に拾い上げていく姿勢も求められるでしょう。


 私はこれまで日本心理臨床学会を見てきて、そのような側面をもともと本学会は持っていたと思います。先達の先生たちはそういった感覚を見せてくれていたと思います。

 私はもう一度それを学会の表に出して大切にしていきたい。それによって科学でもあり芸でもある、心理臨床という行為の独自性(思い切って言うと「深み」みたいなもの)が多くの人と共有できるはずと信じるものです。


 私は広い人脈もなく、また優れた提案ができるわけでもないのですが、上記のようなことであれば自分にも何かしらできることがあるのではないかと思っています。また、もし代議員に選出されましたら、上記のようなことを実現するために、どのような具体的方法があるか、ぜひ皆さんからアイデアをいただきたいとも思っています。


 どうぞよろしくお願いいたします。


Ueda Lab (心理療法研究室)

とある大学で心理療法の研究と教育をしています。

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