日本心理臨床学会参加記(2024年8月)


 8月の後半に日本心理臨床学会の大会が開かれ、参加してきました。

 会員数の多い大きな学会ですので、年次大会は毎年にぎやかです。一年に一度、みんなが集まるお祭りみたいなものかもしれません。学会にはそういう側面があってもいいのかなと思います(私自身は知り合いが少ないので全然お祭りにはなりませんが…苦笑)。


 最近の学会は、資格問題や時代の変化などもあって、さまざまな(ケースというより心理職の存在意義自体を問うような)問題が取り上げられ、激しい議論が交わされることもあります。大事なことでしょう。背景には、学派と学派、地方と都市、若手とベテラン、心理職と他職種、常勤と非常勤、権威と非権威、研究と現場など、いろいろな対立があるのかもしれません。加えて、心理支援が個人の内面に関心を寄せすぎてきて、社会としての問題や社会とのかかわりが手薄になっていたという反省もあるのかもしれません。今年の学会は特にそのような大きなうねりを感じました。

 事例発表を聞いていてもー。

 

 ただ、ほんとうにそうなのかな。私たちは自分の目でほんとうに(自分にとって大切な)問題を見ることがてきているのかな。他人によって作られた問題を見ているのではないかな。と、ふと思うこともあります。


 もっと素朴でもいいのじゃないかな、と。

 少なくとも事例に向かうときにはー。




 今年は、修了生と博士後期課程の学生と一緒に、それぞれ1件ずつポスター発表をしました。もちろんメインは先の二人で、私はサポートでついているだけです。

 私は研究や論文執筆は基本的にいつも一人でおこなっているのですが、過去に一度だけ卒業生と学会発表をしたことがあります。よい思い出です。

 誰かと一緒に発表するのはそれ以来なので、ずいぶんと久しぶりのことになりました。

 若い人が学会で発表してみようと思ってくれるのはうれしいことです。二人のポスター発表はそれぞれとても盛況で、いろんな意見をいただきました。きっと論文にしてくれるはずです(笑)。


 二人にとってよい体験になってくれたらいいなと思いました。




 もう一つのお役目は、ある事例研究の指定討論でした。

 大変重い内容でしたが、考えさせられることの多い、また発表者の先生のお人柄が伝わってくる事例でした。

 それだけに、もっと聞きに来てほしかったなあ。


 あとでゼミの学生が言うには、「学会で何を聞くかは、指定討論者で選びますかねー」と。

 ムムム(笑)。発表者の先生に申し訳なくなりました。


 それはそれとしてー

 フロアの方々の意見は素晴らしかった。何より、質問や意見のありようで、重い事例を、その発表の時間一緒に抱えてくれているという実感がありました。

 一方で、「勉強になったが、事例に圧倒され、その場で意見は言えませんでした。」という若い人もいらっしゃいました。

 いいんです、それで。




 学会はまだWeb大会が残っています。

こちらでは自主シンポジウムを企画しています。


心理療法の共通性を探る(2)

-異なる臨床実践領域における共通性について-


 昨今、心理療法は技法が発達し理論が細分化し、また医療なり福祉なりの領域固有性も強調され、全体として多様化の方向に進んでいます。それ自体はよいことでしょう。一つの分野の発展の方向として自然なことだと思います。

 一方で、「理論や領域は違っても心理療法だったら同じだよね」(「同じ」なのが何なのか、が問題なわけですが)という感覚を共有することが難しくなっているような気もします。


 そのような問題意識のもと、昨年の学会では、異なる技法的オリエンテーションをもつ人たちで集まって、自身のオリエンテーションの中に他のオリエンテーションとも共通するものがあるだろうかをディスカッションしました。

 今年は、異なる領域で臨床実践をおこなっている人たちにお集まりいただき、それぞれのお仕事の中で他の領域とも共通するものがあるだろうかについて、ディスカッションしたいと思います。


 もし関心のある方がいらっしゃったら、ぜひ聞きにいらして下さい。

Ueda Lab (心理療法研究室)

とある大学で心理療法の研究と教育をしています。

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