研修会参加記(2024年3月)


 3月に山口県公認心理師協会の方からお声かけをいただき、研修会に参加させていただきました。


 私は山口県の出身なので、ふるさとに帰るという形にもなりました。

 今回はそういった意味でも大変ありがたいお話で、喜んでお引き受けしたものです。


 午前は、心理臨床に関わる者の職業倫理に関する話をとのことでしたので、「変わることと心理臨床」というテーマでお話しさせていただきました。


 そもそも心理臨床とは何かと言ったときに、(様々な理論や技法が共存しており、またそれぞれによって目的さえ異なるので/さらには心理療法に近い行為もたくさんありますし…)実は定義の仕方が難しいことに気づかされます。これは、さまざまな定義があり得てよいということでもありましょう。

 そのような中、かつて河合隼雄先生が「変わることを大事にするのが心理臨床である」と言われたことがあって、言われてみると当たり前のようであり、同時に理論や技法を越えて共通するものでもあり、かえって面白い定義だなと感じたことがあります。

 同時に、この仕事をしていると、「人が変わることは非常に困難なことであり、場合によっては危険なことでもある。」ということがわかってきます。


 そのようなことをふまえて、心理臨床における倫理を扱うためには、「人が変わる」とはどういうことか、「人が変わる」ときにわれわれに何ができて、何ができないか、についてきちんと理解しておかなければならないだろうと考えたのです。




 今回は、題材の一つとして『モチモチの木』を取り上げてみました。

 これが今回のテーマに関係して適切な素材であったかどうか、まったく自信がありません。ただ、当日はフロアからいろいろな意見をいただけたので、議論の題材にはなったのかなと思います。

 曰く、「豆太は最終的には変わっていないように見えるが、不思議といずれ変わる可能性が感じられる」とか、「変わるものたちのなかでモチモチの木だけが変わらないで存在していることが大切だったのじゃないか」など。

 その中でも「変わることはたしかに大切だが、必ず変わらないといけないのだろうか」と言われたのは、はっとさせられました。もっともであり、ありがたいご意見でした。


 午後は、協会の方が臨床実践の中で感じる(倫理的な問題に関連した)苦労や疑問を話題提供してくださって、それを会場の方たちと共有しながらディスカッションを行いました。このような研修では、後半は事例検討をすることが多いのですが、今回のようなやり方もまたそれとは違った意義があったように思います。

 例えば、情報共有について話題提供の先生がそのご苦労をお話しされ、それについてフロアの別の領域の方がご自身の工夫をお話ししてくださったり、さらにそこからリスクマネジメントの話につながり、またフロアの方からご苦労や工夫が語られたりといった具合で、広がりがあり、大変勉強になりました。


 今回の研修に参加して、あらためて心理臨床における倫理とは「人が変わろうとするときにそれを支えるもの」なんだろうな、と思いました。


 全体を通して、前半の私の話の部分はちょっとがんばりすぎたテーマだったかもしれず、もっと(倫理綱領や関連法規を覚えていくといったような)よくある研修にしておけばよかったかしらと後悔するところもありましたが、後日参加した方の感想を読ませていただき、それに励まされたような次第です。


 ご準備いただいた先生方、本当にありがとうございました!




 そして。

 幼なじみと飲みに行くことができたという、今回は大きなご褒美も付いてきました!


Ueda Lab (心理療法研究室)

とある大学で心理療法の研究と教育をしています。

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