プラネタリウムで出会った人


 先日、子どもとプラネタリウムへ行ってきました。

 その時の話です。


 プラネタリウムの上映時間まで少し時間があったので、同じ建物の中にある常設展示展を見に行きました。その地域の歴史についてわかる展示やちょっとした科学のアトラクションなどがあるものです。


 ほとんど見学者はおらず、二人の子どもを連れてのんびりと見てまわっていました。


 少し進んだところに音楽を聴くことのできるブースがあり、そこで青年がヘッドフォンで音楽を聴いていました。近くには白髪の、身なりのきちんとした、体格の良い老人がおり、その青年のお父さんと見受けられました。

 青年とお父さんはとても仲が良い様子で、その青年の疑問にお父さんが合いの手を入れたり、解説をしたりしながら、進んでいました。

 

 ちょうど私たちが見てまわっているスピードと同じくらいだったため、時々同じ展示物で会うことがあり、互いにそれとなく自然にあいさつを交わしました。





 その常設展示展の最後は、手元のタブレットに絵を描くと、前の大きなスクリーンにそれが映し出されるというアトラクションで、次女はお絵描きが好きなので、特にやりたがっていました。


 ちょうど先の青年とお父さんも同じ場所に来て、そのお父さんが私たちに向かって、「一緒にやりましょう?」と声をかけてくれました。「はい」ということで、横並びで、一緒にその遊びをやっていました。


 特に何を話したわけではありませんが、ひとしきり遊んで、「じゃあ、終わりにして、行こうか」となったときに、最後にそのお父さんと見える老人が、私たちに話しかけて来ました。

 

 「実は彼(青年)は私の息子で、ダウン症で、今年27歳になるのだ」と。

 そして、「失礼ですけど、もしかしたらあなたの娘さん(長女)も少し障がいをお持ちなのでしょうか」と言われました。私が「はい」と答えると、その老人はとても穏やかに、「そうですか。かわいいですね」と言い、最後に柔らかい関西弁で、「お互いにこれからも頑張って行きましょう」と言われました。




 もちろんその青年がダウン症の方であることは最初にわかっていましたので、それ自体は特に驚くことではありませんでしたし、むしろ私は同じペースで展示をまわりながら、その青年と高齢のお父さんの仲の良い様子を横に感じながら、とても温かい気持ちになっていたのです。

 またそのお父さんも、私たちを見て、何かしら障がいを抱えた子どもとその家族ということに気がつきながらまわっていたのでしょう(なにせしょっちゅう座り込んだり、叫んだりしてましたから(笑))。


 それが最後に「お互いにこれからも頑張って行きましょう」という言葉かけになったのだと思います。


 初めて行ったプラネタリウムで、ただ短い時間すれ違った方に過ぎないのですが、しかしものすごく深いところで分かり合えている感じがしました。

 そして、障がいを抱えた子どもの親として大先輩であるその老人の言葉に、たしかに私は、内側から温められ、励まされたのです。


 そういう(ささいといえばささいな、けれど私にとっては大切な)体験をしたということを書き留めておきたいと思います。


Ueda Lab (心理療法研究室)

とある大学で心理療法の研究と教育をしています。

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