「上手く表現できない」(あるいは障害を抱えたきょうだいに対する気持ち)


 今、武満徹さんの「波の盆」という音楽を聴きながらこのブログを書いています。


 これまでのブログでときどき触れてきたように、わが家の長女は重い障害をかかえています。身体も弱く、私にとっては何より守らなければならない存在です。次女は元気で明るく健やかに育っています。


 長女は、(もう身長は妹に抜かれてしまっていますが)気持ちは常に姉なので、いつも妹のことばかり見ていて(私の方は全然気にしてくれません(笑))、妹のやることなすことが気になっているようです。そのようなわけで、長女は、次女がやっていることが心配になったり、逆に自分もやりたくなったりしたときに、まだ「上手く表現できない」ために、大きな声をあげてしまうことがあります。それで次女は自分の遊びを途中でやめなければいけなかったり、集中して勉強ができなかったりします。

 次女は次女で、まだ小学4年生ですから、そのように我慢させられることに対して、ときに姉に向かっていじわるしたり、怒鳴ってしまうこともある。仕方がないのです。次女も「上手く表現できない」のです。当然です。


 しかも、私もそのような場面を上手く収めることができないために、どうしても次女の方を注意したり、叱ったりすることが多くなってしまいます。私も「上手く表現できない」のです。




 今日もそれで次女とけんかになってしまいました。


 今、部屋を出て、泣きながら寝ています。お互いに「なぜわかってくれないのか」という思いです。


 もちろん次女は本当はわかっているみたいですが、納得できなくて当然だと思います。また、自分のことが姉ほど大事されていないのではないかという思いがあるのか、それを確かめるようなことをときどき問うことがあります。


 冷静になってみると、長女も次女も二人ともがかわいそうで、言葉にならないつらさがこみ上げてきます。


 障害をかかえた子どもとその兄弟姉妹の課題は、心理学では「きょうだい研究」と言われて、近年よく見かけるようになってきました。

 研究に値する大事なテーマで、かつ難しい問題でもあるということでしょう。私のゼミの学生の中にも時々これを研究テーマに選択する者がいます。




 いつか次女に、私が何より次女を大事に思っている気持ちが「上手く表現できて」、伝わるといいなと思っています。


 私の人生後半の大事なテーマの一つです。


Ueda Lab (心理療法研究室)

とある大学で心理療法の研究と教育をしています。

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