研修会参加記(2023年9月)


 この夏いくつかの研修会にお声かけをいただき、参加してきました。

 いずれも『カウンセリングを倫理的に考える』(岩崎学術出版社)がきっかけとなったもので 、これもありがたいことでした。



 一つは、長野少年鑑別所での研修会でした。

 

 古い友人が今、長野少年鑑別所で所長をしていて、職員の研修会に来ないかと言われて、ほい、と行ってきたものです。

 鑑別所の職員の方だけでなく、家裁の調査官や保護観察官の方も参加され、日々の業務の中で感じる倫理的葛藤とその対応について語り合いました。


 司法矯正分野の心理職の方々は業務の特徴上(守秘義務一つとっても)独特の葛藤があることを知り、心理職における倫理的問題の普遍性と領域固有性をともに感じ取ることになりました。

 また、この分野で働く方たちは対象者と面接場面だけでなく生活場面でも会うことがあるわけですが、その中で倫理的問題に気をつけながらも「守り」に入るだけでなく、子どもたちに粘り強く丁寧に関わっている様子をうかがって、ある種の矜持のようなものさえ感じました。



 憂歌団の木村さんがちょうど長野にライブに来ていたので、研修会が終わってから友人に連れて行ってもらいました。

 よいオマケでした(笑)。




 続けて、山梨県臨床心理士会医療保健領域委員会において開かれた研修会にうかがいました。


 実は今年の2月に日本心理臨床学会の地区研修会が甲府で開かれたときにシンポジストとしてうかがい、そのご縁であらためて山梨県臨床心理士会として呼んでいただいたものです。

 『カウンセリングを倫理的に考える』を読んでくださってお声かけいただいたのですが、お声かけくださった先生が、「あの本は読んでいて、よい意味で渋滞した」「それがよかった」ということで(笑)、それでお呼びいただいたのでした。

 心理職の職業倫理に関心を持ってもらえていること、また私のような切り口でよいと言っていただいたことをうれしく思い、喜んでお引き受けしました。


 こちらの研修会では、(長野の場合と違って)むしろ一つの事例を時間をかけて全員で検討しました。


 やはり事例を丁寧に検討することは本当に勉強になるものだなと確認した思いでした。 

 若手の方が、丁寧に、かつ飾らずにご自身のかかわっている事例とその中での葛藤をお話し下さったので、私を含め、聞いているフロアの一人一人が自身の抱えているケースを思い起こしながらゆっくり話し合うことができました。


 心理臨床場面で起こる倫理的葛藤について、もちろん私の中に答えがあるわけではないのですが、一人の治療者が取り組んでいることをしっかりお聞きし、全員でいろんな角度からディスカッションしていると、自然と大きなテーマが立ち上がってきて、それを全員で共有できていると感じる瞬間があります。

 教科書的な答えがぽんと与えられるよりずっと意味のある体験であるように思います。


 難しくも充実した研修でした。


 おみやげにいただいたシャインマスカットも美味しく、子どもたちも大喜びでした!



 学会もあり、なんだかこの夏は例年になく勉強したような気がします(笑)。


Ueda Lab (心理療法研究室)

とある大学で心理療法の研究と教育をしています。

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