青山学院学術賞を受賞しました


 このたび、青山学院学術賞を受賞しました。

 11月16日(火)に青山学院創立148周年記念礼拝の中で授与をしていただきました。


 賞というものは本なり論文なりを興味をもって読んでくださって、またその上で評価してくださる方々がいて初めていただけるものですので、まったくの他力だと理解しています。自力ではないという、そのことがかえってありがたく、うれしく感じられます。




 評価の対象になったものは拙著『カウンセリングを倫理的に考える −迷い、決断することの理論と実践−』(岩崎学術出版社)でした。

 倫理と聞くと、正しい行いの基準を示すものであり、なんだか清廉潔白、すっきりとしてお堅いものというイメージですが、この領域でお仕事をしている人はすぐにおわかりの通り、カウンセリングの倫理とは正誤がなかなか決められない状況でいかに振る舞うかということであり、むしろ混沌、あいまいとしてゆらいでいるものです。

 私はこの本の中で、その混沌とゆらぎを大事にしながらカウンセリングの倫理について考えたつもりです。ですので、書き方は「ああでもない、こうでもない」、「こうもできるし、ああもできる」、「私ならこうするが、皆さんはどうか」と右に左にゆらゆら揺れながらその中でもがいて決断するプロセスそのものを示してみたつもりです。


 花田清輝なら「楕円論法」と言うところでしょう(笑)。

 実は、(わりと意図的に)そのような書き方によって心理臨床という営みの大事な部分を描けるのではないかとさえ考えていたのです。


 しかし、現代は短い時間ですっきりとした解が求められる時代ですから、本書のような右に左に揺れながらあいまいになる書き方は好まれないと覚悟もしていました。ゆえに、本賞をいただけたことは、そのような書き方でも興味を持って読んでくださる人たちがいたのだということで、私自身とても励まされることだったのです。


 あらためてこのようなタイプの本を出版してくださった出版社の方と、評価の労をとって下さいました先生方にお礼申し上げます。



「心理臨床活動における倫理とは、心理臨床家を縛るものではなく、むしろ心理臨床家が自由に行動するためのものである。」

(2022年度日本臨床心理士資格認定協会の研修より)


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